院長の大槻です。日本人の歯並びの歴史について説明していこうと思います。
残念ながら東洋人の中でも比較的、日本人は歯並びが悪い方です。それには理由があります。その前に、まず日本の民族の生い立ちを知ると納得できるでしょう。
そもそも日本列島にはその昔、縄文人という民族が暮らしていました。縄文人とは東南アジアから沖縄を経由して日本に移住してきた民族で、眉毛が濃く、二重瞼で、エラが張り、浅黒く、彫りの深い顔立ちで、歯が小さいという特徴を備えた民族のことです。
その縄文人が沖縄や北海道を含む日本全土に分布して、繁栄していたところに、今から約2300年前、朝鮮半島から弥生人が九州を通過してやってきました。弥生民族は約3万年前にシベリアに住み着いていたモンゴロイドと呼ばれる民族で、2万年ほど前の氷河期に厳寒の気候(零下50度)に適応するために、平坦で皮下脂肪が厚く一重瞼で唇が薄く、そして毛が少なくなりました。また大きな歯が特徴です。逆に、皮下脂肪が薄く目が大きくあちこちに凹凸のある顔は、寒さに弱く凍傷になりやすいのです。また、眉や髭が多いと息が氷柱になって困り、唇は口腔粘膜の反転露出部分なので凍傷になりやすいのです。
弥生人が日本のほぼ全土に移動するに従い、縄文人との交配が進み、弥生人と縄文人の混血であるハイブリッド種、日本民族が誕生したのです。現在では平均としておよそ弥生系7割、縄文系3割の比率で混血しているといわれ,それが理由で日本人(和人)は北方、すなわち弥生民族のイメージが強いのです。
さて最初の話、歯並びにもどりますが、このような歴史があるため、日本人の中でも弥生人の大きな歯の遺伝子と、縄文人の狭いアゴの遺伝子を受け継いだ人は、乱杭歯(歯並びがでこぼこの状態)や八重歯になり、弥生人の広いアゴと縄文人の小さい歯の遺伝子を受け継いだ人はすきっ歯になる傾向が強いのだといわれています。この二つの民族の交わりは、いずれにしろ島国、日本の運命だったと考えると、歯並び一つにも歴史がかかわっているのだということを実感できるかと思います。
参考資料:
国立科学博物館ホームページ