衛生士の松原です。
歯茎が下がってきたかな?なんて思うことはないでしょうか???
歯茎(歯ぐき)が下がるとは?
歯ぐきが下がって歯の根っこが露出している状態を「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」と呼びます。
歯は、歯ぐきから出ている「歯冠」と歯ぐきに隠れている「歯根」に大別され、歯冠はエナメル質、象牙質、歯髄(歯の神経)の3層になっています。
エナメル質は体の中でもっとも硬い組織で、外部の刺激から歯髄を守る役割があります。
一方、歯根はセメント質、象牙質、歯髄の3層になっており、セメント質はエナメル質と比べると柔らかく削れやすいのが特徴です。
セメント質が削れて象牙質が剥き出しになると、神経に刺激が伝わって冷たいものや熱いものがしみるといった知覚過敏の症状が現れることがあります。
また、歯ぐきが下がって歯と歯ぐきの境目が広くなると、細菌に感染しやすくなって虫歯になりやすいので注意が必要です。
歯ぐきが下がっているときに起こりうる主な症状は以下の通りです。
- 冷たいものや熱いものを食べたときに歯がしみて痛い
- 歯が長く見える
- 歯と歯の間に食べ物がよく挟まる
- 歯がグラグラする
歯肉退縮が起こるのはなぜ?歯茎(歯ぐき)が下がる原因
歯肉退縮が起こるのは口の中の病気、日常的なデンタルケア、生活習慣の影響などさまざまな原因があります。
ここでは、歯ぐきが下がる7つの原因を紹介します。
歯周病
歯ぐきが下がる主な原因は歯周病です。
歯周病は歯の表面や歯と歯ぐきの境目(歯周ポケット)に溜まった歯垢(プラーク)に棲みつく歯周病菌によって、歯ぐきが炎症したり歯を支える骨が破壊されたりする病気です。
歯周病の初期段階では歯ぐきの腫れ、出血、赤みといった症状が起こり、進行すると歯周ポケットが深くなって歯ぐきが下がってきます。
さらに症状が重くなると歯を支える骨が溶けて歯のぐらつきや歯根の露出といった症状が現れ、場合によっては歯が抜け落ちてしまう場合もあります。
歯周病になる主な原因は、日常的なデンタルケア不足が起因しますが、生まれつき免疫力が低い人など、遺伝によって歯周病にかかりやすい人もいます。
歯の磨き過ぎ
健康的な歯や歯ぐきを保つためには毎日の歯磨きが欠かせません。
しかし、歯磨きをするときにゴシゴシと強い力で磨いてしまうと、歯ぐきにダメージを与えて歯肉退縮を引き起こすことがあります。
かといって歯磨きが不十分だと歯垢が残り、歯周病の原因となります。
歯の磨き過ぎや磨き残しを防ぐには、正しいブラッシング方法を身につけることが大切です。
歯並び・噛み合わせ
歯並びや噛み合わせが悪いと、部分的に過度な力が加わることで歯ぐきに負担がかかり、歯ぐきが下がることがあります。
また、横方向に力が加わると歯肉退縮を引き起こしやすくなるため、歯ぎしりや食いしばりの癖がある人は注意が必要です。
歯並びや噛み合わせが悪いと磨きにくい部分が多くなるため、歯垢が残って歯周病のリスクが高まります。
矯正治療・虫歯治療
矯正装置の不具合によって歯や歯ぐきに過剰な力が加わると、歯肉退縮が起こります。
虫歯治療では、詰め物や被せ物の不具合によって歯や歯ぐきに過剰な力が加わったり、被せ物が歯ぐきに当たっていたりすると歯ぐきが下がりやすいです。
治療による歯肉退縮の可能性を感じた場合は、かかりつけの歯科医師に相談しましょう。
ホルモンバランス
女性ホルモンには、特定の歯周病菌を増やしたり歯周組織の炎症を悪化させたりする作用があることから、女性は男性に比べて歯周病にかかりやすいといわれています。
ホルモンバランスが変化する時期は免疫力の低下や唾液の分泌量も減少し、口内環境が悪化しがちです。
そのため、思春期、妊娠期、更年期といったホルモンバランスが変化する時期は、歯肉退縮が起こりやすくなります。
とくに、妊娠期は女性ホルモンの分泌が急激に増え、つわりによる歯磨き不足や唾液の分泌量低下によって自浄作用が低下しやすい時期なので注意が必要です。
加齢
歯ぐきもその他の組織や器官と同じように、年齢を重ねるともろくなったり、萎縮したりします。
加齢によって歯ぐきが痩せることから、歯ぐきが下がったように見えるのです。
喫煙
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、一酸化炭素は血液中の酸素が運ばれるのを阻害して酸素不足を引き起こす作用があります。
そのため、喫煙習慣があると、健康な歯ぐきを保つために必要な栄養や酸素が届きにくくなります。
また、喫煙すると殺菌作用のある唾液の分泌量も低下するため、歯周病のリスクも高まります。
歯茎(歯ぐき)の後退を防ぐ方法
ここでは、歯ぐきの後退を防ぐ方法を4つ紹介します。
正しくブラッシングを行う
歯ぐきの後退は歯の磨き過ぎも原因になるため、適度な力でやさしくブラッシングするように心がけましょう。
歯磨きをするときは100g〜200gのブラッシング圧が適正とされており、歯ブラシを歯に当てたときに毛先が広がらない程度の力が目安です。
歯ブラシはペンを持つように握ると余計な力が入りにくくなり、歯ブラシの毛の硬さはやわらかめを選ぶと歯ぐきへの負担を抑えられます。
正しいブラッシング方法を身につけて、歯垢が残らないように丁寧に磨くようにしましょう。
【正しいブラッシング方法】
①表側の歯を磨くときは歯と歯ぐきの間に歯ブラシを当てて、歯ぐきをマッサージするように小刻みにブラシを動かす
➁前歯の裏側を磨くときは、歯ブラシを縦に当てて歯垢を掻き出すように動かす
③奥歯の裏側を磨くときは、歯ブラシを斜めに傾けて(45度程度)小刻みに動かす
④奥歯の噛み合わせ部分を磨くときは、届きにくいところにもしっかりと歯ブラシを当てて小刻みに動かす
⑤歯と歯の間を磨くときは、毛先をとどめながら小刻みに動かす
⑥歯と歯ぐきの境目を磨くときは、境目にブラシが当たるように斜めに毛先を当てて小刻みに動かす
とくに、歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目、奥歯の溝、抜けた歯の周り、歯並びが悪い部分は歯垢が付着しやすいので、磨き残しのないように丁寧に磨きましょう。
フロスを使用する
歯磨きだけでは歯と歯の間の歯垢を除去しにくいため、フロスを使用して口内を清潔に保ちましょう。
フロスには必要な長さに切り取って指で操作する糸巻きタイプと、ホルダーにフロスがついているホルダータイプがあります。
指で操作するのが難しい人やフロス初心者は、ホルダータイプが使いやすいでしょう。
正しいフロスの使い方は以下の通りです。
- フロスを40cm程度の長さにカットし、左右の中指に巻きつける。このときフロスの長さは10cm~15cm程度にしておく
- フロスを伸ばした状態で、歯と歯の間に差し込む
- 歯の表面に沿わせながら、フロスを前後に動かして歯垢を掻き出す
- 汚れたら、フロスを綺麗な部分に替えてケアする
強い力で前後に動かすと歯ぐきを傷つけることがあるため、優しく丁寧に行いましょう。
歯石の沈着を防ぐ効果が期待できる歯みがきを使用する
歯垢(プラーク)が長期間歯の表面に残ると、唾液に含まれるカルシウムやリン酸が歯垢に沈着して石灰化し、石のように硬い歯石になります。
歯石はブラッシングでは取ることができないため、そのままにしていると細菌が増殖し歯周病や歯肉退縮のリスクを高めます。
歯石の沈着を防ぐには、そのもととなる歯垢をつかなくするための毎日のブラッシングが重要です。
そこでおすすめなのが、歯石の沈着を防ぐ効果が期待できる歯みがきの活用。
薬用歯みがき「アバンビーズ® グラン」には、歯石の沈着を防ぐゼオライトという有効成分が配合されています。
ゼオライトは口臭ガスを吸着する作用もあるので、オーラルケアにも役立ちます。
その他にも、歯ぐきの炎症や腫れを抑える塩酸ピリドキシンや歯肉炎を予防するβ-グリチルレチン酸、歯石の元である歯垢を除去してくれる生きた乳酸菌「WB2000乳酸菌」が口内環境を健康に保ってくれます。
歯医者で定期的にクリーニングを行う
セルフケアでは完全に歯垢や歯石を取り除くことはできません。
また、噛み合わせや間違ったブラッシングなど歯ぐきが下がる原因は人によって異なるため、歯肉退縮を防ぐには根本的な問題を把握して解決することが大切です。
歯科医院のクリーニングでは、歯周病や虫歯、噛み合わせの検査、専門器具での歯垢や歯石の除去、ブラッシング指導を行います。
定期的に歯科検診を受けると歯や歯ぐきに異常があったときに早期発見・早期治療ができるので、3〜6ヶ月を目安に歯科検診を受けるのがおすすめです。
まとめると、歯茎の状態を常によくしておくことが一番かと思います。みなさんもブラッシング、頑張りましょう😌