2023.06.07

歯周病と肥満

院長の大槻です。

肥満について

先進国での肥満者数は近年増加傾向にあります。食を含めたライフスタイルの変化と捉えられていますが、喫煙対策が進んだ先進諸国では肥満は健康上最も深刻な問題であるといわれています。肥満症は健康を阻む(害する)程度において喫煙に匹敵し、糖尿病、耐糖能障害、脂質代謝異常、高血圧、高尿酸血症・痛風、冠動脈性疾患、脳梗塞などの病気にかかりやすくなり、癌による死亡と肥満が関連していたとの報告もあります。そして近年、歯周病と肥満に関連があることがわかってきました。

肥満の原因

過食、運動不足が肥満の二大原因ですが、実は最近老化現象に伴うホルモンの変化も肥満に関係することがわかってきました。インスリンの働きを正常化する性ホルモンなどは年齢とともに減少し、反対にインスリンが効かなくなる働きがあるホルモンが年齢と伴に増加してきます。これが中高年の肥満を助長しているのです。

また息をする、心臓を動かすなど日常の生きていくために最低限必要な活動を基礎代謝といいますが、これを行うために必要なエナルギーは年齢と伴に低下していきます。すなわち今まで通りの食事ではエネルギーが余り、脂肪という形で身体に貯蓄されることになります。 さらに年齢と伴に運動する機会が減少することが多く、消費するエネルギーが減少します。 にもかかわらず若い時と同じ量を食べていれば、脂肪となってしまいます。 こうしたことが中高年の肥満、いわゆる中年太りにつながっています。また女性の閉経後に減少することで有名なエストロゲンといいう女性ホルモンは減少すると食欲が増えるため、中年以降食欲が増えて食べ過ぎてしまうこともあります。

肥満になると病気になりやすくなる?

以前は脂肪細胞の働きといえば余分なエネルギーの貯蔵庫としか考えられていませんでした。 しかし脂肪細胞は人体最大の内分泌器官として現在は考えられています。脂肪細胞からいろいろな物質を分泌し、体内の複雑な代謝機構をコントロールしているのです。また脂肪細胞からは動脈硬化や糖尿病を悪化させる悪玉物質と、全く反対にそれらの病気の進行を抑える善玉物質、その両方が分泌されます。 こうしたバランスや適切な脂肪の量や脂肪細胞の大きさが健康をうまく保っています。

しかし脂肪細胞の大きさが肥大化したり脂肪の絶対量が多く蓄積した場合、また皮下脂肪と内臓脂肪のバランスが狂ってしまった場合は、インスリンが効かなくなって糖尿病だけでなく動脈硬化、血栓症、高血圧、高脂血症など生活習慣病が進行することがわかっています。肥満は肝臓から放出されるHDLコレステロール(善玉コレスレロール)を低下させ、 LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を上昇させることで異常脂質血症を生み出し、さらに血栓を生じやすくさせます。こうした炎症反応は、動脈硬化疾患や虚血性心疾患の進展に関与すると考えられています。

肥満と歯周病

このように肥満と生活習慣病との関係は切っても切れない間柄ですが、歯科領域では生活習慣病の一つである歯周病とも密接な関係にあります。ある調査では体脂肪率が5%上昇するごとに歯周病リスクが30%増加していたとの報告があります。 また上半身肥満すなわち内蔵肥満の多い人は歯周病の発生率が高く、さらに歯周病の進行度合を示す歯肉の痩せ度合と肥満の関係もあり、お互いに影響し合う関係にあります。その理由は肥満による免疫力の低下、 また脂肪細胞から分泌される物質が歯を支える骨を溶かしたり毛細血管の循環障害を起こすことなどによるものと考えられています。
現在肥満そのものが不顕性感染・炎症の状態であると考えられるようになっており、歯周病も全身にとっては不顕性感染・炎症状態と捉えることができます。事実、歯周炎患者ではその値が上昇しており、歯周治療に伴って低下することも報告されています。

現在歯周病が歯を失う原因のトップで過半数を超えています。 生活習慣病にかからないことはもちろん、快適で豊かな人生を送るためには歯が必要です。それを脅かす最たるものが歯周病ですから、歯周病と密接に関わる肥満に私達は無関心ではいられないのです。

食べ方で肥満を防ぐ

ついつい若い時代のペースで食べ過ぎてしまいますが若い過去の食生活にとらわれず、現在の年齢と身体でエネルギー過剰にならない食生活が大切です。また食事の内容では高脂肪の食事は避けるか、量を減らす必要があります。 さらに減塩も内臓脂肪の減少に有効だといわれています。抗酸化物質を摂取することも有効です。
食事の時間が短い人は要注意です。よく噛んでいない可能性があるからです。噛むという誰にでもできる簡単な方法で血糖値の上昇を抑えホルモンの変化が起きて食欲が低下することがわかっていますから、時間をかけてしっかり噛んで食事を楽しんでください。さらによく噛むことが脳へのいい刺激になって脳の活性化を起こし、唾液分泌が増え免疫力アップや歯と粘膜の健康維持と修復などたくさんの恩恵があります。こうした効果を得るためにも、そして噛むためにも歯を守っていきましょう。

自分に合った運動習慣で肥満を防ぐ

筋肉量を減らさないための運動習慣を持つことが大切です。 筋肉量が充分だと基礎代謝量が上がり、余ったエネルギーを脂肪として取り込みにくい体になります。少し息があがるくらいの有酸素運動が最適です。運動を始める時点で体重過多であれば、運動によっては膝への負担を考慮する必要があります。運動習慣のない人も同様に、ウォーキングなど軽い運動から徐々に運動量を増やしていく配慮が必要です。

合計で同じ時間なら数回に分けて行う運動より、一度で連続して行う方が効果が高いことがわかっていますが、体への負担リスクも高くなるため、体に自身のない方は最初は分けて運動した方がいいかもしれません。一回が10~20分なら1日2~3回に分けましょう。 慣れてくると早足でのウォーキングにすると、通常のウォーキングより約2倍のエネルギー消費になります。

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