院長の大槻です今日は、歯科での痛みの種類について説明していきます。
歯科医院に来院される患者さんの多くは歯や歯茎に痛みを抱えています。そこで今回は歯の痛みの種類と、その病態についてまとめてみました。
痛みには主に次のようなものがあります。
- 風や、触ったことによる誘発痛・・・象牙質知覚過敏症など
- 噛んだことによる誘発痛・・・歯の破折、髄炎、外傷性咬合など
- 冷たいものや温かいものが痛い・・・歯髄炎など
- 何もしなくても痛い・・・歯髄炎・歯の破折・根尖性歯周炎など
- 歯茎の痛み・・・辺縁性歯周縁など
それぞれ見ていきましょう。
⇒歯ブラシや冷水などの様々な刺激に対して、「ピリッとする」「神経にさわるような」「鋭い」痛みが一過性に起こり、刺激がなくなると痛みも寛解します。
⇒原因は歯のエナメル質の中の象牙細管の露出です。その原因としては、咬耗(異常な咬合力、歯ぎしり)、摩耗(不適切な歯磨き等)、歯茎の退縮(歯周病など)が挙げられます。
⇒治療としては、露出した象牙細管を塞いであげることでシミはなくなります。症状どうしてもおさまらない場合は歯の神経をとることもあります。
⇒かんだ時、特に噛み込み時と開口に映るときの2回、鋭い痛みがあります。水平破折では、歯の神経の損傷により、正常な反応が減退または消失している場合があります。
⇒固い食べ物や異物の咀嚼、交通事故やスポーツなどが原因です。
⇒治療法は破折が神経にまで達しているかいないかで異なります。
⇒さまざまな原因によって引き起こされる神経の炎症で代表的な歯の痛みです。
急性漿液性歯髄炎→虫歯を認め、特に冷たいものに対して一過性の誘発痛があります。打診痛は正常で、または原因歯を特定しにくいです。
急性化膿性歯髄炎 → 冷たいものやあついものに対して激痛が誘発され、原因歯を特定できません。炎症が広範囲に及ぶと、咬合痛、打診痛を呈します。夜間痛、拍動痛があります。
慢性潰瘍性歯髄炎 → エックス線写真にて、歯の神経に達する虫歯が認められます。歯髄腔と口腔が交通しているので、内圧が上昇しないため通常 著しい痛みは認められません。しかし、虫歯で穴のあいた部位に食べ物が圧入したり、炎症が広範囲に及ぶと、咬合痛、打診痛を呈します。
慢性増殖性歯髄炎→エックス線写真にて、歯の神経に達する虫歯が認められます。虫歯の部位から歯髄組織が増殖し、そこに刺激が加わらない限り痛みはありません。
⇒虫歯など細菌感染、外傷、気圧の変化などが原因で痛みが発生します。
⇒虫歯が神経に達していたり、近接していて痛みの症状が強い場合、歯の神経らなければなりません。
⇒虫歯など様々な刺激が神経の管を経由して、根尖部歯周組織に炎症を起こすため、自発痛や、咬合痛、違和感などを認めます。
a. 急性根尖性漿液性歯周炎
⇒歯の挺出感、軽度の咬合痛、打診痛はあるが、根尖部の歯茎の腫脹は認められません。刺激が消失すれば経日的に症状は消退します。X線上で根尖部の透過像はほとんど認められません。
b. 急性根尖性化膿性歯周炎
⇒炎症の広がりによって、歯根膜期、骨内期、骨膜下期、粘膜下期と経過をたどります。歯根膜期では軽度の自発痛、歯の挺出感がありますが、骨内期、骨膜下期では著しい自発痛、歯の動揺、挺出、顔面の腫脹、発熱悪寒、リンパ節の腫脹、圧痛などが認められます。粘膜下期では自発痛は減るが、膿瘍部に波動をふれ、膿瘍の自壊による腫脹の軽減が認められます。
c. 慢性根尖性漿液性歯周炎
⇒咬合時の違和感でほとんど症状はありません。
d. 慢性根尖性化膿性歯周炎
⇒軽度の打診痛はあるが、自発痛はほとんどありません。根尖部相当歯肉に限局性の発赤、瘻孔が認められることがあります。
e. 歯根肉芽種
f. 歯根嚢胞
⇒自覚症状はほとんどありません。
慢性根尖性歯周炎の多くは臨床的に無症状に経過しますが、新たに刺激が加わると急性転化をきたす場合があります。(フェニックス膿瘍、症状はbの骨内期、骨膜下期と同じ)
⇒歯周膿瘍とは歯茎の炎症病変で、歯周ポケットの入口が何らかの原因で閉鎖され、膿瘍が形成された状態をいいます。膿瘍内の圧力が高くなっているので、腫脹、圧痛、自発痛を伴います。経過により、急性と慢性に分けられます。
重度になると歯が浮いたり、歯の揺れが大きくなり、噛むと痛みが著しくなり、発熱や、あごや首のまわりのリンパ節がはれることもあります。
⇒原因として、歯周ポケット内のプラーク、免疫力の低下、慢性歯周炎の悪化(炎
症性浸出物の停滞)、歯冠部や歯肉縁下の食片圧入が挙げられます。
⇒切開してうみを出し、膿瘍の内圧を軽減し、痛みを和らげます。また抗生剤や、必要に応じて消炎薬や鎮痛薬を投与します。
⇒原則として、歯周ポケット内すなわち歯周炎になっている歯根面を歯石除去し、原因因子であるプラークおよび歯石を極力機械的に取り除き、原因除去に努めることが大切です。
参考文献
痛みの診断・治療マニュアル 医歯薬出版